24
JUL,2017
JUL,2017

【ドラマーになりたい】音楽に関する仕事に就くには~プロドラマー・只熊良介さん~

# 音楽の仕事

投稿者 :しも

世の中に溢れるさまざまな職業の中で、音楽に関する仕事について取り上げるこのシリーズ企画。

今回は、ステージに立って音を奏でる存在でありながら、演奏を縁の下で支えるプロドラマーに迫ります。

お話をうかがったのは、バンド「chocolatre」や「MORE THE MAN」のメンバーでありながら、Chara傳田真央寺尾紗穂ヒラマミキオ(ex.東京事変)といったアーティストのサポートドラマーとしても活躍する只熊良介(ただくま りょうすけ)さんです。

ドラマー プロ

打楽器は子どもの頃から身近だった

−−−まず最初に、ドラムを始めたキッカケを教えてください。

初めてドラムを叩いたのは、高校1年生の時です。当時の音楽の先生がなかなか自由な発想の人で、期末試験で「なんでもいいから一芸披露。」という課題を与えられました。私はその頃バンドに興味があったので、ドラムを叩くことにしました。

−−−ギターやベースなどもある中で、なぜドラムを?

父親が地元の日本舞踊の会に入って和太鼓もやっていたので、子どもの頃から打楽器が身近な存在だったんですよね。たまに人が足りないと言われて、手伝いで叩くこともありました。だから、バンドがやりたいと思った時にドラムを選んだのはとても自然な選択でした。

−−−初めてドラムを叩いた時はどんな感じでしたか?

和太鼓を経験していたおかげで最初から違和感がなく、8ビートはすんなり叩けましたね。それですっかり調子に乗ってドラムが楽しくなり、高校の卒業アルバムにも「プロドラマーになる!」って書いてました(笑)。

只熊 ドラマー

デビュー前に名刺を作成⁉︎

−−−本格的にドラムを始めたのはいつからですか?

高校を卒業後、大学でバンドサークルに入ってからですね。

−−−やっぱり最初はメジャーなバンドのコピーとか?

そうですね、邦楽ならサザンやジュディマリ、洋楽ならレディオヘッドのように誰もが知っているアーティストのコピーももちろんやりましたが、ちょっと変わった雰囲気のサークルで、みんなが知らないマニアックなバンドも発掘して、それをカッコよくコピーするということに全てをかけていました(笑)。僕は人から呼ばれるがままに、いろいろなバンドでありとあらゆるジャンルのドラムを叩きました。そのおかげで自分の音楽の幅が広がり、ドラマーとしての基礎もできたと思います。

ドラマー 経歴

−−−大学卒業後は?

アルバイトをしながら音楽活動を続けました。しばらくは大学でやっていたバンドをそのまま継続しましたが、卒業後1年くらいでバンドを辞めると、他に音楽の知り合いもいなかったので、まったくの1人になってしまいました。その時は「このままだとただのアルバイターになってしまう!」と焦りましたね。

−−−そういったタイミングで夢を諦めてしまう人もきっと少なくないですよね。只熊さんの場合はどうしましたか?

とりあえず…名刺を作りました。

−−−…名刺?…誰の、なんの名刺ですか?

“プロドラマー只熊良介”の名刺です(笑)。いや、だって結局は“言ったモン勝ち”じゃないですか。何か資格を取ったらプロになれるわけでもないので、とにかく現場に出て名前を売ろうと思い、色々なセッションに参加して名刺を配りまくりました。

−−−それはスゴい。思いきった発想ですね。

この頃は24歳くらいでまだ若かったので、根拠のない自信があったんですよね。売り込みの結果声がかかれば、どんな内容でも受けました。もはやドラムでなくても、路上でカホンを叩くこともありました。

−−−名刺を作って売り込むことで、早速ドラマーとしての仕事が舞い込み始めたわけですか?

いえ、この頃のサポートではほとんどギャラは出ませんでした。それでもとにかく顔を売ることが必要だと思っていて。お金に直接結びつかなくても、どうにか未来に繋がるように“種蒔き”をしていたという感じです。

ドラムセット

サポート思考からバンド思考へ

−−−いろいろなサポート活動を経て、ショコラトルに正式メンバーとして加入したのが2008年ですよね。

そうですね。メンバーとは2006年頃に出会って、それからサポートしてきましたが、2008年に正式加入しました。

−−−なぜ正式加入しようと思ったんですか?

この頃ぼくはサポートと自分のバンドの違いってあまりないと思っていたので、どちらも変わらないモチベーションでやっていたんですが、ショコラトルで活動しながら少しずつ、今ままでのペースでサポート活動を続けていても、これ以上上に行けないなと気づいたんですよね。

数をたくさんやっても、それぞれが深まっていかないと意味がありません。演奏面でも人との付き合いという意味でも。例えば、一流のスタジオミュージシャンが集まって一夜限りの演奏をしたら、それはそれで素晴らしいですが、やっぱり長年一緒にやっているバンドにはかなわないと思うんですよね。

ドラム ライブ

蒔いた種が実を結びはじめる

−−−しかし、Charaさんや傳田真央さんのライブサポートを務めたり、元東京スカパラダイスオーケストラの冷牟田さん率いる「MORE THE MAN」に加入したりと、只熊さんのプロドラマーとしての大きな実績はすべてショコラトル加入後ですよね?

不思議と、そうなんですよね。バンドに専念し始めると、演奏のクオリティはどんどん上がり、ショコラトルの活動を知った人から声がかかるようになりました。以前がむしゃらにサポートをしていた時のように数は多くないんですけど、前よりもひとつひとつの密度が濃く、高いレベルを求められるようになっていきました。

−−−ということは、若い頃の名刺配りよりも、ショコラトルに救われたというわけですね。

いや、それがそうでもなくて。実績としてはショコラトルの活動が評価されるようになったわけですが、人との繋がりは名刺配りの苦労がようやく実を結び始めたという感じです。思わぬ人が覚えていてくれて「ショコラトルで頑張ってるみたいだね。」と誘ってくれたり。大きな仕事もすべて、元をただせば名刺配りの時の縁です。当時はとにかく必死でしたが、やっていたことは間違っていなかったんだと、今は実感できます。

ドラマー どうやってなる

仕事のやりがい

−−−プロドラマーの仕事で楽しいことは何ですか

自分がこれまで見たことがなかったステージからの景色が見られるのは、楽しい…うん、すごく楽しいです!CharaさんのサポートではZepp 東京、傳田真央さんではビルボードライブ大阪やモーションブルー・ヨコハマで演奏させてもらいました。そして、今年のフジロックにはMORE THE MANで出演させていただきます!

−−−すごいですね。私もCharaさんや傳田真央さん、学生の頃からめちゃくちゃ聴いてました。そんなアーティストと一緒に演奏するって、どんな感覚ですか?

私ももちろんお二人とも昔からよく聴いていたので、やっぱり感慨深いですよ。特にCharaさんなんてそんな曲ばっかりじゃないですか。ドラムを叩きながら「うおーー!!」ってなりますよ(笑)。

−−−逆に大変だと思ったことは?

当たり前ですが、求められるレベルが高いことでしょうか。自分がこれまで何をしてきたということは関係なく、ダメなら厳しい指摘も受けます。そういったピリッとした空気感は人によってはキツいと感じるかもしれません。

−−−例えば、実際ツアーのリハーサルはどのような流れで進むんですか?

まずリハの前に曲の譜面が送られてきます。リリースされている曲は、音源のアレンジをベースに始めることが多いですが、当日リハーサルの現場に着いてから「今回はこんなコンセプトで行きます。」と聞かされ、準備していったアレンジが全然使えないということも普通にあります(笑)。

−−−!!…それは焦りますね。。

内心冷や汗モノですが、涼しい表情を装いつつ、見えないところで譜面を握りつぶす。みたいな感覚です(笑)。こういう時のために、どんなアレンジでも臨機応変に対応できる演奏力と引き出しの多さはプロミュージシャンにとって大切ですね。

ドラム 初心者

大切なのは、モチベーションを保ち続けること

−−−最後に、プロドラマーにとって一番大切なことは何ですか?

一番大切なのは、プロとしてのモチベーションを保ち続けることだと思います。技術はもちろん必要ですが、それはドラムが好きなら誰もが一生をかけて高めていくわけで、例えばプロミュージシャンとして仕事をしていなくてもドラムが上手い人はたくさんいます。プロとは「この仕事で生きていく」ということ。仕事には波があって、声がかからないときは正直不安になることもありますが、それでも「俺はプロミュージシャンです」と胸を張って言える取り組みを続けることが、プロとして何よりも大切だと思います。

ドラマー プロ

只熊さん、素敵なお話をありがとうございました!

最後の言葉、とても胸に刺さりました。資格のないプロドラマーという仕事に誇りと自覚を持ち、そのモチベーションを保ち続ける。それは、ドラムの技術を上達させることよりも遥かに難しいことなのかもしれません。

時には不安を感じながらも「プロドラマー」であることにこだわり続ける只熊さんを支えるのは、若い頃から名刺配りをしていたというバイタリティーと、今では只熊さんの“居場所”になっているバンド、ショコラトルなのだと感じました。

■ライブスケジュール

7/29
MORE THE MAN@FUJI ROCK FESTIVAL 2017 苗場食堂

7/30
MORE THE MAN@FUJI ROCK FESTIVAL 2017 Orange Cafe

8/9
ULTIMATE LAB SESSION@三軒茶屋グレープフルーツムーン
出演:Gt.西田修大(吉田ヨウヘイgroup、New Age Rockers)
Gt.さいとうりょうじ(P.O.P、THE SOUL KLAXON)
Gt.塩川剛志(L.E.D.)
Gt.Ryo Hamamoto
Key.おおくぼけい(アーバンギャルド)
Sax.村上大輔(クンクンニコニコ共和国)
Dr.只熊良介(chocolatre / MORE THE MAN)
Dr.大西英雄(渋さ知らズ/Monoral Zombie)

9/10
chocolatreワンマン@京都 cafe Norwegianwood

9/17
MORE THE MAN@北九州高塔山ロックフェス2017
出演:SHEENA & THE ROKKETS
ROCK’N’ROLL GYPSIES
MORE THE MAN
Respect up-beat
横道坊主
YAMAZEN & THE SQUEEZE

●音楽に関する職業インタビュー
音楽の職業「作曲家」
音楽の職業「ピアノの調律師」

ドラムが叩きたい!プロに習うと上達が速い
EYS音楽教室 ドラムコース

この記事をシェアしよう!
MUSIC LESSON LAB
投稿者
1984年生まれのフリーライター。 信州安曇野出身・東京多摩地区在住。 レゲエユニット「KaRaLi(カラリ)」でミュージシャンとしても活動中。