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SEP,2021
SEP,2021

【現役講師が解説】バイオリンの音程を上手に取る7つのステップ

投稿者 :石内幹子

① なぜ音程を正確に取らなければいけないのか理解すべし!

美しいバイオリンの音色。バイオリニストが演奏する音色には、うっとりしますね。「私もあんな風に弾きたいな」と、誰もが思うことでしょう。豊かな美しい音が出したい。ビブラートを綺麗にかけたいと、一生懸命練習することでしょう。

でも、ちょっと待って。音程のこと、後回しにしていませんか?

想像してみて下さい。音色もビブラートも完璧に素晴らしいのに、何となく音痴な演奏だったら??
それだけで「残念な演奏」になってしまいます。
なぜでしょう。

それは、全ての人に共通して、「音程」が一番認識されることだから。絶対音感が無くても、「何か音程ヘンだよね?」と、聴いているほとんどの人が分かってしまうのです。これは、音楽センスが有るか無いかではなく、細かい事は省きますが、人間の耳に備わっている機能なんです。

どんな音色で演奏するか。どんなテンポで演奏するか。ビブラートをどうかけるのか。これらには「美しい」と感じる人それぞれの好みがありますね?でも、音程はどうでしょうか。曲のハーモニーから外れた音を出すと、それだけで違和感を感じます。音程は好みに関わらず、聴く人全てに、「絶対」に分かってしまうものなのです。これは大変!この機会に是非、音程について見直して行きましょう。

② バイオリンは1に音程、2に音程

バイオリンには残念ながら、押さえれば完全な音程を出してくれる鍵盤もありませんし、指板に印すらありません。あんな小さな楽器で沢山の音が出るのですから、指の角度を少し変えただけでも半音くらい、すぐ変わってしまいます。でも、もうみなさんお分かりの様に、音程を正しく取る事はとても重要な事なのです。

バイオリンを弾く人の全てが、この問題に直面します。世界的に有名なバイオリニストでさえ、私たちと同じ様に音程の問題と日々向き合っています。

私は昔、音程の悪い生徒でした。レッスンに行けば、音階、練習曲、コンチェルト、、、どれを弾いても、1時間のレッスンのうちの7、8割の時間をかけて、先生から音程の指導を受けました。自分で音程に気をつけていても、いつの間にかズレている事がほとんどなので、先生にチェックしてもらう事は手っ取り早く確実です。今思えば、先生もとても根気のいるレッスンだったと思いますが、それだけ重要なことだという事が分かります。

「じゃあ、何で正しい音の位置に印を付けたり、もっと音程が取りやすくバイオリンを改良しなかったんだろう?」などとも、ついつい思ってしまいますが、、、、バイオリンの指板の上には幾つの音があるでしょう。その全てに印があったら、逆にどの印がどの音なのか分からなくなってしまいます(笑)。残念ですが、楽器の特性と思って諦めましょう。。。

③ チューニングはこまめに、念入りにすべし!

レッスンをしているとよく、「昨日練習した時にバッチリチューニングを合わせました!」とか、「家を出る前に、チューニングしてきました!」と、意気揚々と言われます。残念ながら、それでは不十分。私たちが思っているよりずっと、バイオリンは繊細な楽器です。温度や湿度で、弦は常に伸びたり縮んだりしています。家でチューニングをしても、レッスンに行くまでに、外の温度と湿度、レッスン会場の温度と湿度はそれぞれ違います。その度に、バイオリンの弦は伸び縮みをしているわけです。

それどころか、バイオリンを弾いている最中でさえ、チューニングは狂います。

コンサートでバイオリニストが、演奏直前にステージ上でチューニングをする姿を見たことがあると思います。あれは、ギリギリまでチューニングを整えたいという執念とも言えます(笑)。ただでさえも、バイオリンは音程を取るのが大変な楽器。それなのにチューニングが正しくなければ、どんなに優秀なバイオリニストでもお手上げです。

慣れてくればバイオリンを弾いている途中でも、「あれ?チューニング違うかな?」と気付く事もありますが、こまめにチューニングする癖をつけるのが良いでしょう。最低でも30分に1回。バイオリンをケースから出した時は絶対です!

チューニングをすることは、音程をしっかり取るためのストレスを軽減してくれます。

④ 姿勢をしっかり整えるべし!

姿勢は本当に音程に大きな影響があります。

意外かもしれませんが、音程をしっかり取りたいなら、まずは姿勢をしっかり整えるべし!せっかく左手が整っていても、姿勢がふらふらしていては、楽器と左手の位置関係が保てません。毎回楽器と左手の距離が違っては、当然音程は定まりません。まずはしっかり背筋を伸ばすことで、バイオリンを上げた状態を保ちます。ネックが上がると左手の指が届きやすくなります。

「あれ?何かいつもより音程が定まらないなぁ」と思ったら、まず姿勢をしっかり整えてみましょう。

⑤ 左手のフォームをしっかり決めるべし!

指板に印が無いのに、どうして押さえる場所が分かるのか、不思議ですよね??ポイントはズバリ、『勘』です(笑)。

2つの勘を働かせて音程を確実なものにして行きます。1つ目の『勘』は、『聴覚』。自分が出している音の音程が正しいか、よーく聞くことです。2つ目の『勘』は、目をつぶっていても正しい位置に指を置く事が出来る、指自体の『勘』です。『勘』とは言っても、当てずっぽうでは命中率は下がります。なるべく命中率を上げるために、左手のフォームをしっかり整えましょう。

バイオリンの教本には、巻頭に構え方や左手のフォームの写真やイラストがあると思います。ですが、私は細かい所は必ずしも全ての人に当てはまらないと思っています。レッスンをしていると、指の太い男性や、手の小さい女性、人差し指が長い生徒さんや小指が短い生徒さんもいます。私自身も、親指と小指が短いです。手の角度や、肘の入れ方などを工夫することで、それぞれに合ったフォームを構築するべきです。

一つ共通して言えることは、指板(ネック)を握らないことです。ネックを握ってしまうと、かえって指が届きにくくなり、チカラが入りすぎて、ポジション移動やビブラートもかかりにくくなります。手のひらの空間を保ちましょう。

さて、それが出来たら、自分のフォームを作って行きます。人差し指から順番に、正しい位置に指を置いて行きましょう。全ての指は指板から離す事なく押さえっぱなしにして下さい。全ての指が正しい位置を押さえられたら、小指から1本ずつ、指を指板から1センチだけ離して行きましょう。全ての指の指先が、指板から1センチの距離にあるフォームを保ちます。1センチ以上指先が指板から離れてしまうと、音程がズレるリスクが多くなってしまいます。

小指が届きにくい場合は、肘をおへその方に入れ込んで行くと、届きやすくなります。届き過ぎる場合は、その逆です。手首がひねれる場合は、手首でも調整してみましょう。

小指が短い私は、肘を楽器の下に入れ込み、手首をひねることで小指を届きやすくしています。

⑥ 調性を意識するべし!

絶対音感なんか無いし、、、「調性」とか言われても。。。。

そうですね。何だか難しそうで、みんな調性をないがしろにしがちです。私はもともと、音程の悪い生徒でした。先生に「そこの音程はチョット高く、そこはチョット低く」と言われても、いまいち良く分からずストレスでした。しかしある時から、先生にアドバイスをいただいて「調性」を気にしたら、みるみる音程が良くなっていったのです!

まずは自分の弾く曲が、ハ長調なのか、ト長調なのか、イ短調なのか、、、細かいことは分からなくても良いので調べましょう。自分の弾く曲の調が分かったら、その調の音階を弾いて見ます。インターネットでも調べられますし、先生に手伝ってもらっても良いでしょう。難しいことは置いておいて、自分の弾く曲の調の音階を、ただ弾いてみます。するとあら不思議。それだけで耳が「調性」に慣れてしまいます。これだけで、音程はグッと精度が上がります。

少し、理論的な音程の取り方もお伝えしておきたいと思います。わかりやすい様に、ハ長調で説明しますね。是非、弾きながら読んで頂ければ分かりやすいと思います。

調性には、長調と短調があります。

まずはお馴染みのハ長調です。ドレミファソラシド。弾いてみると、明るいイメージの音階(長調)ですね。

次に、第3音(ミ)を、半音下げて弾いてみると、、、暗いイメージの音階(短調)になります。第3音の音程が高いか、低いかで、調が変わってしまうのがお分かり頂けると思います。演奏する時も、長調の曲なら第3音の音程が低くならない様に。短調の曲なら第3音の音程が高くならない様に意識すると良いです。

音階の出発点の音(ハ長調ならド、ト長調ならソ)を、主音と言います。主音の1つ前の音を導音と言います。字のごとく、導く音。主音を導く音です。導音は音程を高めに取った方が、収まりが良いです。ぜひ参考にしてみて下さい!

⑦ 指板のシールは早めに取るべし!

バイオリンを練習し始めた時、多くの人が指板にシールを貼っていると思います。私の生徒さんも、初めてバイオリンを持つ時には必ずシールを貼ります。ある程度バイオリンを弾くことに慣れてきた頃、「そろそろ指板のシールを取りましょうか」と言うと、ほとんどの方が「不安なのでもう少しだけ貼っておきたい」と言います。

しかしシールを剥がしてみると、音程がどんどん良くなって行きます。

これは、シールがあると、それを「見て」音程を取ってしまっているからです。シールの位置に集中してしまい、そこを押すことに神経を使ってしまいます。「聴く」と言う事が二の次になってしまいます。

シールが無いと、最終的に頼れるのは聴覚のみです。シールを取ると、一生懸命「聴く」ようになるのです。

初めてバイオリンを持った人に、何の印も無く音程を取るのは大変な事ですが、そこに頼り過ぎると、シール依存症になってしまいます。

正しい音程を取るためにも、ある程度慣れてきたら、シールは早めに取ってしまいましょう。

最後に

音程を正しく取ることは、バイオリンを演奏する上では必要不可欠です。大変なことですが、バイオリンを弾いている全ての人が抱いている問題です。是非練習で参考にして頂き、先生にもチェックしてもらいましょう。良い音程を取るコツさえつかめば、演奏のクオリティはグンと変わることでしょう!

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MUSIC LESSON LAB
投稿者
武蔵野音楽大学卒業。武蔵野音楽大学在学中、ステファン・グラッペリの音楽と出会いマヌーシュ・スウィングに傾倒。作曲、アレンジも手がけ、オーケストラや室内楽での活動のほか、ポップスからジャズまで幅広い分野で活躍。2013年に、フランスを代表するジャズ・ヴァイオリニスト、フローリン・ニクレスクをプロデューサー迎えてアルバム「Swimg from Paris」をパリでレコーディング、リリース。2015年〜2017渡仏。Didier Lockwood氏に師事。