06
OCT,2021
OCT,2021

【ジャズ入門】常に進化を続けたジャズの歴史と名プレイヤーたち

# 音楽ネタ

投稿者 :佐久本 政典

ジャズのイメージ

①ジャズの原型とは

ジャズ(Jazz)の歴史は19世紀末から20世紀初頭のアメリカから始まったといわれています。

アメリカの歴史の中で、アフリカから移住してきた黒人たち(その多くは奴隷として扱われていた)によってジャズの最初の形が生まれます。

農作業をしながら辛い体験や愚痴など色々な思いを歌にして歌われてたと言われるブルースがジャズの原型となったと言われており、ブルースに特徴的な3度、5度、7度の音が半音下がるブルーノートと呼ばれる暗めの響きの音を使ってよく口ずさまれていたものが、後にロックやジャズへ発展していったという流れがあったといわれています。

因みに映画の『グリーンマイル』の冒頭の描写で農作業をしている黒人女性がこのブルースのような歌を歌ってるシーンがあり、まさにこんな感じで鼻歌みたいに流行してたのだと思います。

1800年代の後半くらいになると、南北戦争(1861~1865年)が終結した際に軍団バンドの楽器が出回り、その楽器を使って黒人達が即興演奏を中心としたアンサンブルスタイルの音楽がニューオーリンズで誕生し、これがニューオーリンズジャズの始まりとなりました。

特に黒人の葬儀の時に生きてる時は辛かったのだから死んだ時は楽しく音楽をしようと演奏をしながら参列して行進してた際にセカンドラインというリズムパターンが誕生したといわれています。
この名前の由来は諸説あるそうですが、列の2番目にドラムがいたからセカンドラインと呼ばれるようになったといわれています。

このように黒人の辛い体験から真逆の陽気さが表れた音楽というのがジャズの原型なのです。

ジャズの先駆者でもあるサッチモことルイ・アームストロング(Louis Armstrong)が1920年代にトランペットと歌でジャズを演奏し、ニューヨークやニューオーリンズ等アメリカの各地にジャズを届けたことによりムーヴメントが起こります。

②ビバップ以降のジャズの進化

ジャズは時代や環境とともにその音楽のスタイルが変化し、禁酒法(1920年~1933年)時代のキャバレーでビッグバンドという豪華なホーンセクションとベーシックなリズムセクションのアンサンブルスタイルの演奏が大流行します。

1930年代になるとカウント・ベイシー(Count Basie)、デューク・エリントン(Duke Ellington)、グレン・ミラー(Glenn Miller)等のビッグバンドオーケストラが誕生し、踊りやすいダンスミュージックのスタイルが進化に加わり、跳ねたリズム(=スウィング)を特徴とするスウィングジャズというものが大流行します。

その時代を経て第二次世界大戦が始まり、徴兵等でプレイヤーも減ったこともあって小編成のジャズのスタイルに変わっていきます。

その時に現れたのが、アート・テイタム(Art Tatum, pf)、バド・パウエル(Bud Powell, pf)、セロニアス・モンク(Thelonious Monk, pf)、チャーリー・パーカー(Charlie Parker, as)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie, tp)といったジャズに革新的な進化をもたらした名プレイヤー達です。

この小編成のジャズは特にコードチェンジを細分化してスリリングなまでのアップテンポで、音楽の芸術性を超えるような即興演奏のスタイルに変わっていきます。

これがまさにビバップといわれる音楽です。

このビバップというのは、フレーズを歌にした時のビーバップッというような歌い方(=スキャット)が語源となったといわれています。

特にチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピー、セロニアス・モンク達がダンスの様子と即興性を重視したオリジナル曲やレコーディングを沢山残し、ビバップのスタイルを今現在にも残していきました。

後のジャズ界の帝王とも呼ばれたマイルス・デイヴィス(Miles Davis, tp)は、このビバップの時代からジャズをプレイし、その後のモダンジャズの創立に大きな影響を与えます。

ビバップからモダンジャズへ

次にビバップから、最もジャズらしいと言われているモダンジャズのスタイルにまた変化していき、さらにハードバップと呼ばれるスタイルも生み出していきました。

より芸術性を追求したモダンジャズの代表的なミュージシャン達としては、マイルス・デイヴィスをはじめ、ジョン・コルトレーン(John Coltrane, ts)、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins, ts)、レッド・ガーランド(Red Garland, pf)、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly, pf)、ソニー・クラーク(Sonny Clark, pf)、ビル・エヴァンス(Bill Evans, pf)トミー・フラナガン(Tommy Flanagan, pf)、バリー・ハリス(Barry Harris, pf)、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner, pf)、ポール・チェンバース(Paul Chambers, bs)、ジミー・ギャリソン(Jimmy Garrison, bs)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones, ds)、アート・ブレイキー(Art Blakey, ds)、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones, ds)など他にも様々な名プレイヤーの活躍が挙げられます。

スタイルの大きな変化として、モダンジャズでは即興演奏(インプロビゼーション)でのソロを長くとっているレコーディングが多く残されています。

これはレコードの収録時間の変化も関係していて、ビバップ時代のレコードの1曲が大体3分くらいのものが多かったのに対し、ハードバップでは6分以上で各ソリストも2~3コーラスのインプロビゼーションを演奏する場面が目立つようになりました。

それと、ビバップとの違いとしてビバップは元の曲のコード進行を細かくし、テーマの部分もクラシックのエチュードのように細かい音符で楽譜が真っ黒になるほどのメロディを演奏してから、ソロでも細かく早いパッセージを表現するのが主流でしたが、モダンジャズ(今でもカフェや飲食店のBGMなどで耳にする機会も多いかと思います)ではよりオシャレな雰囲気で当時のアメリカンポップスの曲のメロディを取り上げるとこが多くなり、テンポもバラードからミディアム、アップと色々とバリエーションも豊かな感じに演奏されるのが特徴的になりました。

クールジャズ、モードジャズの誕生

その流れの中で、クールジャズと称されるスタイルが生まれます。これはビバップに比べ、個々のテクニックよりも楽器編成やアンサンブルを重視し、白人のためのジャズとも評されましたが、この創始者は誰よりもジャズの音楽的進化を追求した黒人のマイルス・デイヴィスでした。

さらにモードジャズ(モーダルジャズ)と呼ばれるスタイルも誕生しました。
これはコード進行から離れてインプロビゼーションをしていくというコンセプトが特徴的で、モード(教会旋法)という簡単にいうと一つのスケール(音階)だけで音楽を作るというミニマムな構造のジャズです。

特にジャズの名盤といわれてるマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』(Kind of Blue)という作品は、上記にも紹介したテナーの名手コルトレーン、アルトのキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)というハードバップには欠かせない強力なホーンプレイヤーも参加した、ジャズ史に残るレコーディングの一つとなってます。

この細かいコードの概念をとっぱらったモードジャズに対して、コルトレーンのジャズのコードの表現を極限に追求した新たなコードチェンジを駆使したオリジナル曲を発表していきます。

名曲になったところではマイルスの「So What」に対してコルトレーンの「Moment’s Notice」や、特にジャズのコード的に進化した「Giant Steps」という曲が誕生し今でもジャズプレイヤーにとってインプロビゼーションの大きな課題曲になってます。

この「Giant Steps」はコルトレーン・チェンジと呼ばれる新たな音楽的な理論を構築し、一曲の中で一定の法則に基づいて頻繁に転調(キーが変わること)を繰り返すという、とても難解なパターンになってます。

このようにモダンジャズの進化を様々プレイヤーの音楽スタイルによって当時のニューヨークのジャズシーンを作っていきました。

フリージャズの発展

そして次に人種差別の問題が、黒人ミュージシャンによるブラックミュージックの進化にもつながっていきます。

その先駆者として、モードの概念と宗教的な思想を特に取り入れていたコルトレーンの音楽的な進化が加速し、彼の音楽性はより前衛的な次のスタイルへと変わっていきました。
ビバップやモードジャズの行き詰まりを感じていたコルトレーンの音楽は、既成の概念を覆したより自由で革新な音楽へと進化し、そのスタイルはフリージャズと呼ばれています。

フュージョン全盛期~コンテンポラリージャズ

そして、時代は環境と共に変化しジャズの次の形としてフュージョンというジャンルが登場します。フュージョンとは、“融合する”といった意味です。

これは電気楽器の進化とも関係しており、エレクトリックキーボードやエレキギターを用いた音楽やファンキーな音楽、ロックなスタイル、ソウルなスタイルなど様々なジャンルの音楽とも融合しながら、ジャズの新たなムーヴメントを作り出していきました。

ここでもマイルスはジャズにフュージョンの要素を取り入れ、彼自身の音楽を進化させています。ハードバップからフリージャズの要素、またエレクトリックな楽器をバンドに入れ、曲もマイケル・ジャクソンやシンディー・ローパー等のポップスの曲をカバーし人気となりました。

同時期に、エレキベースプレイヤーのジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)を始めとするファンキーな要素やロックのリズム等を取り入れたスタイルも革新的に歴史を作っていきました。

コルトレーン以後の超絶技巧派テナープレイヤーとしてマイケル・ブラッカー(Michael Brecker)やボブ・バーグ(Bob Berg)といったミュージシャン達が、ジャズの技巧性とファンキーなスタイルでのソロを演出しまさに新たな進化をしていきました。

そのあとのジャズのスタイルはそれまでの歴史が作り出した音楽性を各プレイヤー達が取り入れ、80年代頃にまた以前のハードバップのスタイルがニューヨークのシーンで復興したり、モダンジャズの名曲を変拍子にアレンジするなどより現代的に進化したコンテンポラリージャズ(直訳すると“現代のジャズ”の意)が誕生しました。

コンテンポラリー・ジャズはウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis, ts)ブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis, ts)、ケニー・カークランド(Kenny Kirkland, pf)、ケニー・ギャレット(Kenny Garrett, as)、ジョシュア・レッドマン(Joshua Redman, ts)、マーク・ターナー(Mark Turner, ts)、そしてジョン・コルトレーンの息子ラヴィ・コルトレーン(Ravi Coltrane, ts)等々によって現代のニューヨークのジャズのスタイルがまた作り出されています。

このように時代と社会情勢によってジャズという音楽は進化し、一周したような流れになっていきました。

③スウィングの8分音符について

次にジャズの要素として重要なスウィングというものがあります。

よく8分音符で表現されるのですが、この解説が割と難しいところもあると感じています。

よく吹奏楽のスウィングの表記に見られる3連符での2:1いったような書き方を見ることはあるのですが、実際に当時のプレイヤーがそう意識していたわけではなく、人によってこの音符の長さの感覚が違います。

最も簡単にこのジャズの言語を伝えるとなると、ドゥダッドゥダッという感じで少しアフタービートにインパクトを置くような感じで口で歌うようなイメージが最適だと思います。

サッチモもスキャットとよばれる即興を歌うこともあり、シュビ、ドゥビ、シュビ、ドゥバッというような言葉を歌で表現しています(スキャットの逸話として歌詞を忘れた際に即興で歌ったことが始まりという話もあったりします)。

楽器によってこの8分の表現が異なるところなので、ピアノよりも管楽器の方がイメージしやすいところもあると思います。

簡単に結論をいうと、あまり論理的に3連譜で考えずにフレーズを歌うようなイメージを持っていただくと、よりジャズのスウィングの表現に近くなると思います。

④ニューヨークと日本のジャズの違いとは

今や世界的にジャズは演奏されており、ジャズ誕生の地であるアメリカは勿論、ヨーロッパ、また中国等のアジア圏そして日本と沢山のミュージシャンによって愛され演奏されています。

その中で身近な日本のジャズシーンとニューヨークのジャズのフィーリングはどう違うかを体験も踏まえて考察したいと思います。

数年前に私がニューヨークに行った際に素直に感じたのは、自分の聴いてきた音楽がまさに目の前にあったという感じで「ここにあったんだ」という確認した瞬間がありました。

ジャンルを超えて街に音楽があるような感じでした。

グランドセントラル駅にはエントランスやホームなど色々な場所で音楽を演奏している人達がいました。セントラルパークにも練習みたいな感じでサックスを始めたばかりなのかなというようなおじさんがいたり、凄く上手いドラマーがソロで叩いていたりと場所を問わずに音楽を聴くことが出来る街でした。

このように、まず音楽に対しての文化が日本とは違います。

ジャズクラブにライブを見にいった際も色々な方達が音楽を聴きに来ていました。

日本で見るような光景とは違う印象でした。

そして音楽的な部分でいうと個人的にジャズは歌そのものだったと改めて感じ、日本のジャズにはどこかその歌心が聴こえる瞬間が少ないとも思っていたので、やはり本場にはずっとその心が残り続けているのだと思いました。

これも個人的にずっと感じてたことなのですが、演奏ではなくて音楽がしたいとずっと思っていました。

日本のジャズの印象として、技術を高めて個人世界に入っていくというような音楽性を強く感じたのですが、ニューヨークのジャズは技術も勿論段違いですが、その中にしっかりお互いをリスペクトし合い会話があり自分の音楽をしっかり歌うというようなイメージが強くありました。

こんな感じでジャズの一番の重要なポイントは自分の歌を歌い一緒にプレイするミュージシャンと会話をしていくというようなところが何より音楽的で素晴らしいものだと思ってます。

これからジャズを始めてみたいという方やジャズに興味があるという方色々な方々がいるかもしれませんが、是非ジャズの歌の世界を楽しみながら自分自身の音を見つけてください。

最後にここで書いたジャズの歴史はほんの一部です。他にも沢山のミュージシャン達が名曲、名演を残してます。

楽器も様々なプレイヤーが活躍していたので、ご自身で演奏される楽器や興味のある楽器のプレイヤーにフォーカスして名演のレコードを探したり、歴史を調べたりと追求してみてください。

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MUSIC LESSON LAB
投稿者
中学の時にテナーサックスをはじめ同時にジャズに興味を持つ。 2010年3月洗足学園音大ジャズ科を卒業。 在学中より演奏活動を開始し現在に至る。 ジャズサックスを山中良之氏、佐藤達哉氏に師事。